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ご近所のそば散歩 「溜池 さ和長」
溜池交差点の傍、外堀通りに面した所に仕事場がある。で、一番近いところにあるそば店が、溜池さ和長である。昼も夜も、この辺に勤めているサラリーマンやOLでいっぱいだ。行列を我慢してやっと店に入る。穏やかでこざっぱりした感じのお姉さんが、小気味良く席に案内してくれる。せいろを頼んだ。ごく細いがしっかりとした挽きぐるみで喉越しが良い。水切りもよく、盛り方も丁寧ではぐれがよい。そば粉は北海道産とか。23本摘んで一啜りすると、香りと甘みが鼻腔を伝っていった。そばは汁で食わすと思っている。せいろに付いてきた辛汁は、しっかりと濃くてコクがある。立て続けに手繰る。うまいねえ。汁が汚れるから、七色唐辛子とねぎと山葵はそば猪口に入れない。そばにまぶして、そばで薬味を包むようにして手繰る。山葵がきちんと効いて、この食べ方もおつなものだ。でも、大きな漆塗りの湯桶で出てくる蕎麦湯を楽しむには、汁が薬味でぐちゃぐちゃな方がいい。きれいな残り汁に入れるよりも蕎麦湯が旨く感じるから不思議だ。ふうっと一息ついて見上げた天井は、竹組みと竹編みの設え。落ち着いた雰囲気とご亭主のまあるいお顔に送り出されて、満足満足。
酒は、東一・伯楽星・菊正宗など。焼酎は、峠(蕎麦 長野)泰明(麦 大分)富乃宝山(芋鹿児島)角玉(芋 鹿児島)など。何れも蕎麦湯割りによく合う。にしん煮(柔らかくほっこりと旨い)出巻き玉子(たっぷり)さつま揚げ(自家製)蕎麦みそ(やや甘。そばの実がさっくり)、そば前が進むわけだ。
溜池 さ和長
東京都港区赤阪1-4-8 TEL 03-3584-9968
営業時間:月〜土11:30 〜 14:00 17:30 〜 21:30
定休日:日曜日
<そば語>
せいろ(江戸そばは、茹で上げてから蒸して食べた時期がある。このときの名残で、せいろのような器に盛ったもりそばを云う)
挽きぐるみ(蕎麦の実は、一番外の殻と間の甘皮と芯の実からなる。甘皮と実を一緒に粉に挽いたものを挽きぐるみという。そばらしい旨みが出る)
辛汁(もりそばについてくる汁のこと。因みに温かいそばの汁を甘汁という)
手繰る(そばを食うこと)
そば前(酒のこと。そばを手繰る前にやるのでこう云う) |