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平成19年5月15日、泉ガーデンコンファレンスセンターにて森ビル株式会社企画開発部の藤巻部長をはじめ、森ビルの皆様をお招きし、「六本木の街づくりを考える」と題しご講演を頂きました。講演終了後、質疑応答を交えながら「東京ミッドタウン」オープン後の街づくりについて考えました。
森ビル株式会社の街づくりに対する理念
森ビル株式会社は、1959年6月2日の設立以来貸しビル業からスタートし、大規模開発、文化都市開発へと事業を広げ、現在では、ビル123棟・賃貸面積123万m2・入居会社数約2,327社を数えるまでに発展してきました。実は、最初の貸しビルが他の地権者さんとの共同事業だったというところからスタートしたそうで、すでにこのころから現在の森ビルさん事業の下地が出来ていたようです。そして「アークヒルズ」を起点に「愛宕グリーンヒルズ」・「元麻布ヒルズ」を経て、2003年「六本木ヒルズ」で結実した都市づくりの理念は、1.「安心・安全」:地震に強い都市づくり 2.「環境と緑」:都市と自然の共生 3.「文化・芸術」:新しい想像力と可能性の誕生であった。
開発事例
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ニューヨーク |
東 京 |
公園面積/一人当 |
29.1m2 |
5.5m2 |
居住スペース/一戸当 |
80.0m2 |
55.0m2 |
人口密度(都心4区) |
250人/6,000ha |
104人/6,000ha |
昼間人口(都心4区) |
300万人 |
300万人 |
夜間人口(都心4区) |
150万人 |
50万人 |
道路量 |
28% |
32% |
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上の表は、ニューヨークと東京の比較であるが、誰もが予想できるものとしては、公園面積・居住スペース・夜間人口などであるが、意外だったのは人口密度と道路量であった。
つまり、ニューヨークは、人口密度が高いのに居住スペースが広いということは、それだけ土地を有効利用しているということであり、日本の道路量が多いのは路地状の道が多いためであり、ニューヨークのそれは、道幅の広い道路ということである。
アークヒルズや六本木ヒルズでは、バーチカルガーデンシティといって密集した低層住宅や事務所ビルを高層の建物にし、オープンスペースとして緑地を創出する手法がと取られました。現に20年前にオープンしたアークヒルズは、桜並木をはじめ成長した植木が大きな緑地をなしています。六本木ヒルズでは、開発前の緑地面積が16,540m2から26,000m2に増えましたし、サーモグラフィックによる検証でも明らかに表面温度が低くなっていました。
ヒートアイランド現象の軽減につながったといえます。
また、安心安全な街づくりの観点から災害に強い街づくりを目指し、建物は最先端の耐震、免震構造になっているそうです。中でも特出なのは、緑化と免震を一体化させた建物です。劇場の屋上部分を緑化するために土の重量を制震要素として利用したそうです。屋上の部分を揺らすことで下の部分の地震エネルギーを吸収する手法だそうです。他にも災害時に備え食料を常に10万食備蓄していますし、井戸水の確保もしているそうです。
タウンマネージメント
街のブランディングやプロモーション活動、街の保安管理、店舗を取り纏める商業運営など広い視野で街全体をプロデュースしています。各施設のコンテンツ開発、運営管理もしているそうです。
六本木の街づくりの状況
六本木の街は、東京ミッドタウンがオープンし、国立新美術館もオープンしたことでサントリー・森・国立新の3美術館の一帯を「六本木アート・トライアングル」と名付け、「芸術の街」という新たな機能を持つことになった。夜主体の街から文化の薫り高い昼も人が回遊する街になりつつあります。そのため「安心安全街づくり推進会議」・「六本木商店街振興組合」を中心に清掃、パトロール、落書き消し等の地道な活動が行われています。また、風俗営業の取り締まりも強化されているそうです。
今後の開発、計画としては、「六本木3丁目地区市街地再開発」・「六本木路づくり検討会」・「芋洗い坂電線地中化」等があるそうです。
質疑応答
質疑は、開発現場での苦労話等様々な質問がでましたが、その中で今回のテーマに則した質疑応答をご紹介いたします。
「街づくりの心構えは?」に対し「街を愛すること、長く続けること」だという答えでした。例として六本木ヒルズの回転ドア事件以降、安心安全を謳った自分たちの街に危険がまだあることに危機感を持った森ビル株式会社は、自分たちの街は自分たち自らが危険を点検しなくてはならないということで、社員さんに土日祭日に出勤してもらうボランティアを募集したところ多くの応募があったそうです。そして今も子供やお年寄りをはじめお客様に不自由がないかなど活動を続けているそうです。また、六本木ヒルズ自治会の原理事長は、多くの方たちが訪れてくれる自分たちの街をきれいにしようと常に吸い殻やゴミを拾って歩き回っているそうです。しかし、それもある日、六本木商店街振興組合の後藤理事長夫妻が人知れず、一心にピンクチラシをはがし回っている姿を目撃し感銘を受けたからだそうです。街づくりの基本とは正にこのような例にあるのではないでしょうか。
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